BLOG ブログ

納税地

納税地

 法人税法16条で納税地について定められています。

内国法人の法人税の納税地は、その本店または主たる事務所の所在地とする。

 法人が移転したので法人税法20条に基づき異動届を出したところ、法務局への登記をしていないのであれば納税地の異動として扱えないと言われました。根拠を尋ねたのですが、そういうことにしている、との答えしかもらえませんでした。

 条文上、本店や主たる事務所の所在地について法人税法上に定義規定はありません。
 会社法を見てみます。

第四条 会社の住所は、その本店の所在地にあるものとする。

 そして、この本店の所在地は定款に記載することになっています。

第二十七条 株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。
三 本店の所在地

 そして、この本店所在地は法務局に登記することになっています。

会社法
第九百十一条 株式会社の設立の登記は、その本店の所在地において、次に掲げる日のいずれか遅い日から二週間以内にしなければならない。
3項
三 本店及び支店の所在場所

 そして、これらに変更があった場合は変更の登記をしなければなりません。

会社法
第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。

 つまり、会社法上は本店の所在地は登記しなければならず、逆に言うと登記したものが所在地であると言えます。

 でも、あくまでもこれは会社法の話であって法人税法の話ではありません。借用概念として会社法上の定義をそのまま用いるのは適当とは言えないのではないでしょうか。

 法人税法では名目ではなく実質に対して課税を行うことを前提としているはずです。それがはっきりと示されているのが法人税法11条の実質所得者課税の原則と言われているものです。

第十一条 資産又は事業から生ずる収益の法律上帰属するとみられる者が単なる名義人であつて、その収益を享受せず、その者以外の法人がその収益を享受する場合には、その収益は、これを享受する法人に帰属するものとして、この法律の規定を適用する。

 実質に対して課税を行うのに、その基となる法人の所在地を他の法律上の形式にこだわる理由が分かりません。

 極端な話として、登記せずに他の都道府県に実質的に異動したとしても登記上の所在地の所轄税務署が管轄なのかと聞いたところ、『そうなります』とのこと。

 これはでもおかしいですね。そうならないために法人税法18条があるはずです。

第十八条 前三条の規定による納税地が法人(法人課税信託の受託者である個人を含む。以下この章において同じ。)の事業又は資産の状況からみて法人税の納税地として不適当であると認められる場合には、その納税地の所轄国税局長(政令で定める場合には、国税庁長官。以下この条において同じ。)は、これらの規定にかかわらず、その法人税の納税地を指定することができる。

 要は、税務署長が指定するから納税者は勝手に異動届を出すな、ということになりますね。

 連絡先の変更として受け取るとのことで話が終わりましたが、なんだか変な気持ちです。

 余談ですが、法人税法の条文上は申告書を『所轄の』税務署長に提出することは求めてませんね。この件についてはまた。