税理士の業務広告
2020年6月15日発行の税理士界(第1389号)に日税連第64回定期総会議案が掲載されています。
この第4号議案の9に綱紀監察部の事業計画案があり、その中に
(7)税理士の業務広告(特にインターネットによるホームページ等)について税理士会との連絡調整を図るとともに、比較広告等を行う周施業者の利用に関する指針について検討する。
というのがありました。これは、税理士会連合会の会則の品位保持に関するものだと思います。
日本税理士会連合会会則
(品位保持の指導) 第59条 税理士会は、その会員が税理士及び税理士法人の使命にかんがみ、税理士業務の改善進歩及び納税義務の適正な実現に努めるとともに、税理士の信用又は品位を害するような行為をしないように指導しなければならない。
かつては税理士は、この品位保持の観点から広告についてかなり制限されていました。それが『政府の規制改革推進政策の趣旨を斟酌し』平成14年に『税理士会会員の業務の広告に関する運用指針』により税理士の広告の制限が緩和されました。
これを受け、各税理士会において綱紀規則の細則が設けられ広告について細かく定められました。
この中の禁止される広告にひとつに『特定の会員又は会員の事務所と比較した広告』というのがあります。
最初に記載した綱紀監察部の事業計画案は、これを受けての事業計画であると思われます。
インターネットで『税理士 料金』などで検索すると色々な税理士紹介のサイトの広告が並び、安い料金の税理士を紹介することで集客を図っています。
これらの広告は『特定の』税理士との比較ではありませんが、『一般的な』料金より安い、とか、9,900円からなど低額な具体的な金額を出して目を引くようにしています。
これらについて、税理士の品位が害されていると感じている税理士が多いということでしょう。一方でそのような紹介業者を利用している税理士も多く、それによって業界自体が廉価競争せざるを得ない状況になっていることを危惧している税理士は多いです。
私は、そのようなサイトを経由して紹介された方と契約をするのは気が進まないので、紹介サイトからの『紹介させてくれ』という営業は基本的にお断りしています。紹介料の負担等の条件に納得いかないことも多々ありますし。
確かに自分自身、何か物を買うときなどはインターネットで安く買えるところを探しますが、税理士業務はそのような料金だけで比べるものではないはずだと思っています。というか、安い料金を目的とした方と契約しても、より安い料金の税理士を見つけたらそちらに切り替えるだろうという思いが常にありながらサポートするのは私には無理です。
もちろん、契約後に満足してもらえるサービスを提供すれば、たとえ他に料金が安いところがあっても切り替えることはないはず、という考えもありますが、安さで税理士を選ぶ方にとってはサービス=安さ、なのではないかと思うのです。
また、そのような選び方、選ばれ方から始まるお付き合いではその後のやり取りが難しいのではないかと思っています。
というのは、税理士自体は偉くもなんともなく、先生と呼ばれるような職業ではないと思いますが、納税は法律に従って行うものなので、私たちも『このように処理しなければ損金(費用)にならない』というようなお話をすることが多くなります。
その時にある程度こちらの言うことを聞いてもらえるような関係性がないと『雇ってやったのに偉そうに言うな、なんとかするためにお前に金払ってるんだぞ』という気持ちになりかねません(そもそも『雇われて』はいません)。
税理士側は自分の考えを押し付けているわけではなく、多くの場合、法律上どうなっているかを説明し、数パターンのシミュレーション等を説明し、どうするかは経営者に委ねていると思うのですが、法律上の『しなければ(損金に)ならない』となっていることの不満の矛先を『雇ってやっている』相手にぶつける方がいらっしゃるようです。
こうなると、お客さんにとっても税理士にとっても不満がたまるだけで双方にメリットはありません。
そのために、料金以外でのお付き合いのスタートが必要だと思うのです。