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個人事業を開始した後の税務上の手続き

 個人事業を開始した後にやるべき税務上の手続きです。

 業種、業態によっては細かいものが色々ありますが、一般的な最低限のものだけを紹介します。

 基本的に、時系列に沿って紹介します。

都道府県への開業届

 都道府県によって提出期限が違いますが、福岡県の場合は開業した翌月の10日までに開業届を所轄の県税事務所に提出するようになっています。
 提出期限や所轄については、お住いの都道府県のWebサイトで『個人事業税 開業』などで検索してみてください。
 なお、『開業』とはいつなのかについては、次の項目『個人事業の開業届出』をご覧ください。
 
 

福岡県:個人の事業税

福岡県:県税事務所および相談窓口の所在地

税務署への個人事業の開業届出

 開業して1か月以内に所轄の税務署に個人事業の開業届を提出します。
 この『開業』がいつなのかについて皆さん悩まれるようですが、自宅と別に店舗を借りた、とか他の仕事を辞めて専念するようにした、など自分で『開業した』と思った時が開業です。

 開業届を出したら申告をしないといけない(税金を払わないといけない)ので、出さない方がいいということにはなりません。開業届の提出の有無にかかわらず、所得があれば必ず申告が必要で、事業でなければ『雑所得』として申告し税金を払うことになります。

 開業届を出すと『事業所得』として申告をしますので、お金を借りたり事業用の預金口座を開設する際に『個人事業者』として対応されます。
 この開業届が個人事業者である証拠として金融機関などから要求されることがありますので、必ず2部作成して1部を税務署に提出、もう1部に税務署で受付印を押してもらって控えとして保存し、そのコピーを渡すようにしてください。
 
 

国税庁:個人事業の開業届出

国税庁:税務署の所在地などを知りたい方

源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

 人を雇って、または家族を青色専従者にして給与を支払う場合は、原則として給与から所得税を差し引いて支払い、支払った翌月の10日までに所轄税務署にその差し引いた所得税を申告納付する必要があります。
 この毎月の申告納付について年2回にまとめることができるようにするために『源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請』をします。
 これによって、1月から6月に支払った給与等について7月10日までに、7月から12月に支払った給与等について翌年1月20日までにそれぞれまとめて申告納付することができるようになります。
 この申請ができるのは、給料を払う人が毎月10人未満である場合です。

 強制ではなく、任意なので毎月申告納付したい(してもよい)場合は提出する必要はありません。
 また、届出ではなく申請なので必ず認められるわけでもありません。

 提出した場合は、提出した月の翌月に支払う給与分から適用になります。
 たとえば、3月に提出した場合は4月に支払う給与分からの適用なので、その納付は5月になります。よって、4月までは(3月に支払った給与分までは)通常通り毎月分として申告納付し、4,5,6月に支払った給与についてはまとめて7月10日までに申告納付することになります。

 なお、個人事業者の場合は、個人事業の開業届に『給与等の支払の状況』欄があるので、別途『給与支払事務所等の開設の届出』は提出する必要ありません。
 
 

国税庁:源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

所得税の青色申告承認申請

 青色申告をしたい(青色申告の特典を使いたい)場合は、開業(開業届に書いた開業日)後2か月以内に『所得税の青色申告承認申請』を提出します。
 間に合わなかった場合は、翌年の3月15日までに提出すると翌年から適用となります。

 青色申告の特典の大きなものは、特別控除として最低10万円が所得から控除できることです。
 通常、事業上の収入から事業上の経費を差し引いた事業所得を基に税金が計算されますが、経費のほかにこの特別控除を引くことができます。言い換えると、お金が出ていかない経費を上乗せできるということです。
 ただし、この特典が受けられる代わりに帳簿を作成して入出金の記録をしなければなりません。

 この帳簿について、ちゃんとした帳簿であれば10万円ではなく55万円の特別控除になり、さらに電子申告をすれば65万円の控除になります。なにをもって『ちゃんとした帳簿』なのかについては、いつかまた。
 
 

国税庁:青色申告特別控除

青色事業専従者給与に関する届出

 上記の青色申告承認申請により青色申告者となった場合のもう一つの特典が『青色事業専従者給与』です。
 本来であれば、事業をするにあたって配偶者など家族に手伝ってもらっても給料の支払いは原則経費となりません。
 『家族なんだからただで手伝うのが当たり前でしょ』ということでしょう。
 一応、配偶者は86万円、その他の生計一の親族は50万円を限度に経費とすることはできますが、給料ではなく計算上の経費ですので、少し意味が違いますね。

 これが青色申告者の場合、実際に給料を払うことができ、その支払った給料の額が経費となります。
 そのためには、事業を手伝う人がいることになった日から2か月以内に『青色事業専従者給与に関する届出』を提出します。
 間に合わなかった場合は、翌年の3月15日までに提出すると翌年から適用となります。

 ただし、誰に対してもいくらでもいいわけではなく、その事業を手伝うことに専念している生計一の家族に対して客観的に妥当な金額の範囲でなければ認められません。
 
 

青色事業専従者給与に関する届出

国税庁:青色事業専従者給与と事業専従者控除

所得税の棚卸資産の評価方法の届出

 卸売業、小売業の場合、期末(年末)に商品の棚卸をする必要があります。
 その際に、その商品をいくらとして帳簿に記載するかということに関係するのが評価方法です。

 提出しない場合には『最終仕入原価法』を選択したものとして取り扱われます。
 この最終仕入原価法とは、同じ商品について年内で仕入れ値が変動した場合、最後に仕入れたときの金額で期末に残った商品を評価する方法です。一番手間がかからない方法です。

 この方法以外に原価法、低価法、その他の方法で評価したい場合は、最初の申告期限までに『所得税の棚卸資産の評価方法の届出』を提出する必要があります。
 
 

国税庁:所得税の棚卸資産の評価方法の届出手続

所得税の減価償却資産の償却方法の届出

 10万円以上の資産がある場合は、原則として買った年に全額を経費にすることができません。
 減価償却費としてその資産が使える年数(耐用年数)に分けて経費にします。
 この減価償却費を計算するときの方法が償却方法です。

 提出しない場合には『定額法』を選択したものとして取り扱われます。
 定額法は、毎年同じ額だけ経費としていく方法です。

 この方法以外の方法で償却したい場合は、最初の申告期限までに『所得税の減価償却資産の償却方法の届出』を提出する必要があります。
 
 

国税庁:所得税の減価償却資産の償却方法の届出手続

所得税の確定申告

 開業した翌年の2月16日から3月15日の間に所得税の確定申告書を提出して、自分で計算した所得税を納付しなければなりません。
 申告書Bのほか、青色申告者は青色申告決算書、それ以外(白色申告者)は収支内訳書の添付が必要です。

 この申告書は、事業所得だけでなくその年のすべての所得を計上して合算して税金を計算しますので、事業を始める前の給与や自宅等の売却などがあればそれらの所得も計算する必要があります。

 ご自分で計算することに不安がある場合、今後の事業についても相談に乗ってくれる人が欲しい場合は、当事務所にご連絡ください。
 
 

個人の確定申告 料金表

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