税理士の営業
一般的な商売では、他社の顧客を自社に引き込むことこそが販路拡大をする手段であり、それを達成するために営業マンは他社より優れている点を強調し他社から乗り換えてもらうことに力を注ぎます。
また、客だけでなく優れた社員を他社から引き抜くことも業界を生き抜き、秀でるための手段となっています。
しかし、税理士業界ではこれはやってはいけないことになっています。
九州北部税理士会綱紀規則
(業務侵害行為の禁止)
第25条 会員は、直接であると間接であるとを問わず、他の税理士又は税理士法人の業務を不当又は不公正な方法によって侵害する次のような行為をしてはならない。
(1) 納税義務者に対しみだりに業務の委嘱を懇請すること。
(2) 不公正な方法をもって業務の委嘱を誘引すること。
(3) 他の税理士又は税理士法人の使用人等を引き抜き雇用すること。
(4) 上記各号のほか、不当又は不公正な方法によって業務を侵害すること。
2 会員は、すでに他の税理士若しくは税理士法人が関与している者より委嘱の申し込みを受けた場合は、良識により判断し、相互の信義にもとらないよう努めなければならない。
他業種から税理士業界へ入ってきた人の中には、このような規制が税理士業界にあるとは夢とも知らず、これまで自らが行ってきたように当然のように現在関与している税理士がいる事業者に営業をかけることがあります。
他業種からの転入組でなくとも、このような規制があることを知らずにやっている人もいます。
しかし、税理士は国民の三大義務である納税に関して、租税を徴収する国や地方公共団体と納税者の間に入り、『独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそつて(税理士法1条)』申告書を作成する職業です。その基になるのは法律です。
法律に従った上で職務を果たすべき税理士が自らをその対象としている税理士法や会則規則を知らずに、禁止されていることを行って自らの利益とする、ということはあってはならないことでしょう。