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税務会計ソフトは電気羊の夢を見るか

税務会計ソフトは電気羊の夢を見るか

税務会計ソフトは電気羊の夢を見るか

※これは、博多支部の令和元年5月号会報に掲載された文章の基になっている完全版の文章です。

税理士は将来無くなる職業と言われる理由1

その理由の一つは税理士試験の受験者数の減少である。
税理士試験受験者数と合格者数を見ると、2009年受験者数74,547人合格者9,358人であったのが、2018年受験者数30,850人合格者4,716人と半減している。

でも、税理士の数は減っていない

しかし、税理士登録者数を見てみると2010年末72,039人に対して2019年3月78,028人となっており減少はしておらず、税理士新規登録者も2010年2,642人に対して2018年2,727人となっている。
このことから税理士試験受験者(試験合格者)は減少しているが、登録者総数も新規登録者も微増しており、税理士の数自体は減少傾向にはないと言える。(これによって、税理士試験の在り方に問題があるのではないかという別の疑念が生じるがここでは割愛する。)

税理士は将来無くなる職業と言われる理由2

税理士は無くなる職業と言われるもう一つの理由は、オックスフォード大学のMichael A. Osborne准教授らが2013年に発表した『THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?
』(雇用の未来:コンピューター化によって仕事は失われるのか?)である。

この論文の付録にて、職業を702のカテゴリに分け、それらをコンピューターに取って代わられる可能性の低いものから高いものへと順位を付けているものの695位(確率99%)にTax Preparers、671位にBookkeeping, Accounting, and Auditing Clerks(確率98%)と記された。

これを受けて、週刊現代が2014年11月1日号にて『オックスフォード大学が認定 あと10年で「消える職業」「なくなる仕事」』とセンセーショナルな見出しにて逆順に順位を付して紹介し、野村総合研究所が日米の職業の違いなどを考慮して、この准教授らと2015年に共同研究した結果をまとめた『日本におけるコンピューター化と仕事の未来
』にて、経理事務員を『自動化可能性が最も高い職業』として2番目に掲げた。

これらを各メディアが後追いで紹介し、確率が同率のものを同一順位と組み替えるなどし、税理士はなくなる職業1位で簿記、会計、監査の事務員は2位などと書きたてた。

論文は不要な職業と認定しているか

准教授の論文の目的は、コンピューター化の可能性を示そうとするものである。
よって、データの基になる考え方も、たとえば、接客トークによる気配りを行うレストランのホールスタッフの代わりに店内のテーブルにタブレットを設置すれば、おすすめメニューの提示、オーダーの受注、支払いができるので自動化可能な職業として分類するなど、職業の内容を細分化し自動化できるか否かに注目する手法によって数値化して結論に導いている。

つまり、自動化した方が人の幸福度が上がるとかより良いサービスとして満足を与えられ収益力が上がるとか社会全体の経済が活性化するという観点ではないので、この結果通りに実現する可能性が高いとは言えない。

結論

税理士は将来無くなる職業と言われている根拠については、上記により否定した。
とはいえ、定型的な処理についてはコンピューター化が不要であるわけはないことは皆様ご承知の通りである。
関与先が何を求めているのかを的確に読み取り、納得いく説明を丁寧にした上で、関与先の求めていることを実現すべく、情報収集と処理にコンピューターを駆使するという、人とコンピューター双方の使い手となることがより求められていくと感じている。